放線冠 のバックアップ(No.3)

『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
 

 放線冠(ほうせんかん)とは、何かを囲むように放射状(同心円状)に取り巻く(かんむりのような)構造に付けられる名前で、

  • 卵細胞の周囲を取り巻く顆粒層細胞の層
  • 大脳内部を放射状に走行する神経線維の束

の名前で使われている。どちらの用法のときも、英語名、ラテン語名は同じく corona radiata(コロナ・ラディアータ)。

卵細胞の周囲を取り巻く放線冠

 卵細胞周囲の放線冠とは、卵巣から排卵され、卵管を通って子宮へと流れていく卵細胞のまわりを囲んでいる細胞層のこと。この細胞層は卵巣のなかで卵細胞を囲んでいた顆粒層細胞(の一部)である。排卵された卵細胞を顕微鏡で見ると、卵細胞のまわりを冠が取り巻いているように見えることからこう呼ばれる。

言語表記発音、読み方
日本語医学放線冠ほうせんかん
英語・ラテン語corona radiataコロナ・ラディアータ

 卵巣内で、卵細胞卵胞の中で成熟していく。卵細胞は顆粒層細胞(または卵胞上皮細胞)という細胞層に取り巻かれていて、卵細胞はこの細胞を通して栄養を受け取る。排卵前の成熟卵胞(グラーフ卵胞)になると、卵細胞とそれを囲む数層の顆粒層細胞の部分は、卵丘という盛り上がりをつくっている。排卵されるときは、卵丘(=卵細胞とそれを囲む放線冠の細胞)ごと卵胞壁からちぎれて、卵巣の外へと押し出され、卵管内を流れていく。精子と受精するときも、卵細胞のまわりにはまだ放線冠がついているので、精子は放線冠の層も通り抜けないと受精できない。

 放線冠の細胞と卵細胞との間には透明帯という膜がある。

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大脳内部の線維走行の放線冠

 大脳内部の放線冠とは、大脳内部、つまり大脳髄質を走る大量の神経線維が、大脳の最も奥にある内包大脳基底核視床などを中心として、放射状に走る様子について付けられた名前。つまり、内包、大脳基底核、視床などと大脳の表面にある大脳皮質とをつなぐ線維の束のこと。

言語表記発音、読み方
日本語医学放線冠ほうせんかん
英語・ラテン語corona radiataコロナ・ラディアータ

 大脳皮質とそれ以外の部位をつなぐ神経線維のことを投射線維と呼ぶので、放線冠は投射線維が大脳髄質で作っている構造ともいえる。これらの線維には、たとえば骨格筋の運動を制御する錐体路の線維が大脳皮質の運動中枢から内包に向かう線維や、視覚聴覚皮膚感覚などの感覚情報が視床を経由して大脳皮質のそれぞれの中枢に向かう線維など、上行性下行性の線維が含まれる。

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<ご注意> 『1年生の解剖学辞典』は、解剖学を学んでいる人によって書かれているはずですが、間違いがあるかもしれません。内容はかならず教科書その他で確認してください。また間違いをみつけたら「編集」から直していただくか、「ノート」にコメントを残していただけるとうれしいです。
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