刷子縁 の変更点

『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
 

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 ''刷子縁''とは、[[腸]]の内側の[[上皮]]や[[腎臓]]の[[尿細管]]の上皮などで、空間に面する側の上皮細胞の表面(細胞膜があるはずの場所)が厚く縁取られているように見える構造のこと。通常の[[顕微鏡]](光学顕微鏡)でみたときの見え方を元にした呼び方。これを[[電子顕微鏡]]でもっと拡大して見ると、[[上皮細胞]]の表面に[[微絨毛]]がびっしりと生えていることがわかる。

|>|~言語|~表記|~発音、読み方|
|日本語|医学|[[刷子縁]]* |さっしえん|
|~|~|[[線条縁]]**,*** |せんじょうえん|
|~|~|[[小皮縁]]**,† |しょうひえん|
|>|英語|brush border* |ブラッシュ・ボーダー|
|~|~|striated border*** |ストゥリエィティッド・ボーダー|
|~|~|cuticular border† |キューティクラー・ボーダー|

| * |  刷子縁は、brush borderに対応。「刷子」は「さっし」と読み、ブラシの意味で、[[細胞膜]]にびっしりと毛が生えているように見えることから |f
| ** |  [[線条縁]]、[[小皮縁]]を、刷子縁と使い分ける場合は、生えている[[微絨毛]]が短い場合によく使う。使い分けは[[刷子縁]]の項目に |f
| *** |  線条縁は striated border に対応。striated はスジまたは線が入っている意味で、微絨毛によってできる細かく並んだ線を指した呼び名 |f
| † |  小皮縁は、cuticular border に対応。cuticleはキューティクルで、表面の薄い皮(小皮)を指す。細胞膜が(微絨毛によって)ふつうよりも厚くなっているようにみえることを指す呼び名 |f

 刷子縁が生えている場所は、[[腎臓]]の[[近位尿細管]]の[[上皮細胞]]の[[内腔面]]、[[小腸]]と[[大腸]]の[[粘膜上皮]]や[[腸腺]]、[[胆嚢]]の粘膜上皮など。

*** 厳密な(伝統的な)用法 [#u9a1615a]
 微絨毛の基本構造はどこでも同じだが、どこに生えているかによって、微絨毛の長さは異なる。刷子縁の用語を使うのは、厳密にいうと、ちょっと長め(2[[μm>マイクロメートル]] 程度)の[[微絨毛]]の場合で、たとえば、[[腎臓]]の[[近位尿細管]]の場合にこう呼ぶ。長めの微絨毛は細胞表面から毛が生えているようにみえる。一方、[[小腸]]と[[大腸]]の[[粘膜上皮]]では1本1本の微絨毛の長さが腎臓の半分ぐらいしかなく、顕微鏡で見たときに毛が生えているようには見えず、単に細胞表面が縁取られているように見える。これは昔は別のものだと考えられていたため、[[線条縁]]、[[小皮縁]]と呼んでいた。現在は、これらを区別せずに、刷子縁としてまとめて扱うことも多い。

*** 刷子縁と呼ばない微絨毛もある [#k4d4daea]
 生えている[[微絨毛]]がもっとずっと長いとき、[[精巣上体管]]や[[精管]]の[[上皮]]の微絨毛はずっと長く、見た目は[[線毛]](繊毛)のように見える。これは[[不動毛]]と呼ばれる。一方、微絨毛が短い時。顕微鏡で見てもわからないぐらい短い微絨毛はいろいろな場所にあるが、これらは刷子縁とは呼ばない。

*** 線毛(繊毛)は刷子縁ではない [#q20c2f51]
 [[線毛]]は顕微鏡での見た目は似ているが、構造も作用も異なった別のもので、これを刷子縁とは呼ばない。

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