腕
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
腕とは、またはうでとは、厳密な医学・解剖学用語ではなく、状況によって違う箇所をさす日常語。解剖学用語に言い換えると、
目次 |
ただし、うでのようにとび出た構造のことを、解剖学用語では、「~腕(わん)」と名づけることがある。
大きく2つにわけると… †
肩から手首までを指すとき → 「上腕と前腕」 †
この用法の「腕」にぴったり合うような1語の解剖学用語は、たぶんない。解剖学用語でいうと、上腕(肩から肘まで、つまり二の腕のこと)と前腕(肘から手首まで)に相当する。自由上肢のうち、手(=手首から先)を除いた部分ともいえる。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 一般 | 腕 | うで |
医学 | 上腕と前腕 | じょうわんとぜんわん | |
英語 | 一般 | arm* | アーム |
医学 | arm and forearm* | アーム・アンド・フォアアーム | |
ラテン語 | brachium et antebrachium | ブラキウム・エト・アンテブラキウム |
* 英語の arm との関係を参照 |
肩から先すべてを指すとき → 「上肢」 †
この用法で使いたいときは、上肢(または自由上肢)を使う。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 一般 | 腕 | うで |
医学 | 上肢 | じょうし | |
自由上肢 | じゆうじょうし | ||
英語 | 一般 | arm (*1) | アーム |
単数 | upper limb | アッパー・リム | |
superior limb | スーぺリア・リム | ||
superior member | スーぺリア・メンバー | ||
ラテン語 | 単数 | membrum superius | メンブルム・スペリウス |
* 英語の arm との関係を参照 |
古代の日本語では… †
「腕」は、肘から手首まで、解剖学用語でいうと前腕のことを指したらしい。今では、明確に肘から先だけを指して「腕」を使うことはないと思われる。
英語の arm との関係 †
英語での「腕」は、arm ということになっている。日本語の「腕」と同じく、英語の arm も(専門用語としてではなく)一般的な用法では、「上腕+前腕」をさす場合もあれば、それに手首から先も含んだ自由上肢全体を指す場合もある。
だが、英語の arm は、医学・解剖学用語として使うときには、arm =上腕だけを指す。ラテン語の brachium ブラキウムに対応する。前腕は forearm を使い区別する。したがって、英語の文献で arm が出てきたら、「いわゆる腕全体」なのか「上腕」なのか注意する。