硬膜
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
硬膜とは、脳と脊髄を囲んでいる、脳脊髄膜(髄膜)の一部で、3層構造をしている脳脊髄膜のうちの最外層のこと。脳脊髄膜の3層のうちで最も厚く強い膜で、コラーゲン線維が主成分である。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | 硬膜 | こうまく |
英語・ラテン語 | dura mater * | (英語読み) ドゥーラ・メイター デューラ・マーター (ラテン語読み)ドゥラ・マーテル | |
英語 | dural membrane | ドゥーラル・メンブレン | |
dura | ドゥーラ、 デューラ | ||
形容 | dural | ドゥラル、デュラル |
* | ラテン語では dura は強い、mater は母の意味 |
脳のまわりの硬膜を脳硬膜、脊髄のまわりの硬膜を脊髄硬膜ともいう。脳硬膜では、硬膜の外側半分が頭蓋内側の骨膜を兼ねている。
なぜ、ラテン語の髄膜が「母」なのか? †
ラテン語の硬膜 dura mater は「丈夫な母」の意味である。なぜ、母 …?
mater(母)の単語が使われはじめたのは、アラビア語の用語がラテン語へ翻訳されたときから。10世紀イスラム(アッバース朝のイスラム帝国の時代)の医学百科事典(外科医、アリー・イブン・アッバース著)がラテン語に翻訳されたときにこれが起こった。mater のもとになった言葉はアラビア語の "al umm" で、この言葉は直訳するとたしかに「母」なのだが、アラビア語には「膜」に相当する独立した言葉がなく、守るもの、包むものの意味で "al umm" は「膜」のことも指す言葉だった。訳者はそれに気づかず?、「母」と訳してしまったらしい。