重炭酸イオン のバックアップ(No.1)
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
重炭酸イオンとは、または、炭酸水素イオンとは、体液に特にたくさん含まれている陰イオン。pH を調節し安定させる緩衝液として重要。化学式は HCO3- 。
体液(血液、組織液などの細胞外液)には、細胞の呼吸によってつくられた二酸化炭素 CO2 がたくさん溶けていて、そのうちの一部は炭酸 H2CO3 に変化している。炭酸が液中でイオンに電離し、重炭酸イオン HCO3-、炭酸イオン CO32- にもなり、これらの量のバランスで体液の pH が調節されている。大部分は重炭酸イオンで、炭酸イオンは量が少ない。
体液では、炭酸 H2CO3 は一部が水素イオン H+ と重炭酸イオン HCO3- に分かれて、水素イオン H+ を増やすので 弱酸、重炭酸イオン HCO3- は、水素イオン H+ と結合して炭酸 H2CO3 になり、液中の水素イオン H+ を減らすので弱アルカリである。
また、十二指腸腺の分泌物や膵臓から分泌される膵液にたくさん含まれていて、弱アルカリ性になっている。胃の消化物は胃液に含まれる塩酸 HCl の影響で強い酸性になっているので、これらの液体に含まれる重炭酸イオン HCO3- で中和されて中性に近づく。
一方、細胞内で液体の pH を安定化させるはたらきに重要なのは リン酸 H3PO4 の陰イオン(リン酸二水素イオン H2PO4-、リン酸一水素イオン HPO42- )である。