上皮
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
上皮とは、細胞がびっしりと密着して並んで、全体としてシートあるいは膜を作っている構造。体の中で何かの空間に面する表面はたいてい上皮でできている。たとえば、皮膚の表面の層(=表皮)、消化管の粘膜の一番内側の層など。上皮を作っている細胞を上皮細胞という。上皮は、上皮組織に分類される。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | 上皮 | じょうひ |
英語・ラテン語 | epithelium | (英語読み)エピスィーリアム (ラテン語読み)エピテリウム |
上皮の特徴は、細胞どうしがお互いに密着して、上皮の両側の場所をしっかりと区切っていること。上皮の細胞の並び方は上皮によってかなり異なり、細胞の並び方によって上皮の機能もかなり異なる(「上皮の分類」参照)。
上皮の中には血管は入り込まない。
- 上皮のうち、血管、リンパ管などの一番内側の1層の膜を作っている上皮のことを、特に内皮、内皮を作っている細胞を、内皮細胞という。
- 上皮のうち、胸膜、心膜、腹膜などの漿膜をつくっている上皮のことを、特に中皮と呼ぶ習慣がある。中皮を作っている細胞は中皮細胞。
- 狭い意味での上皮は、中皮や内皮を含まない。この場合の上皮は、体の外側に面する表面や、体の表面と管などでつながっている場所にある境界の膜、と定義できる。たとえば、消化管は口や肛門で、腎臓の尿細管は尿管、膀胱、尿道を経て、精巣の精細管は精管、尿道を経て、それぞれ体外とつながっている。一方、中皮も内皮も体の表面とはつながっていない。
上皮の分類 †
上皮は、上皮を作っている細胞の形、並び方によって、何通りにも分類されている。体のあちこちにある上皮は、どのような上皮によって作られているのか決まっている。
上皮細胞の層による分類 †
上皮をつくる細胞が、一列に並んでいる場合、2層以上に積み重なっている場合などにわけられる。一列に並んでいるのは単層上皮、細胞が2列以上にならんでいれば、重層上皮という。
上皮細胞の形による分類 †
上皮の膜をつくっている1個1個の細胞の形について、その高さと幅とを比べたとき、細胞が縦に長く背が高い場合、高さと幅がほぼ同程度の場合、平べったい場合などにわけられる。縦に長い細胞の形を円柱、高さと幅が同程度の細胞の形を立方、細胞が平べったいことを扁平と呼んで、上皮の分類に使う。もし、細胞の層が何層もあるときには、一番表面に近い層(最表層)の細胞の形で分類する。
細胞の形と層の数の組み合わせの基本 †
- 単層扁平上皮
- 平べったい細胞が1層にならんでできている上皮。血管の一番内側の層(内皮)、胸膜や腹膜などの漿膜、肺の肺胞の上皮など。
- 単層立方上皮
- サイコロ型あるいは比較的丸っこい細胞が1層にならんでできている上皮。腎臓の尿細管の上皮、唾液腺や膵臓などの導管の細い部分など。
- 単層円柱上皮
- 縦に長い細胞が1層に並んでいる上皮。胃や小腸、大腸の粘膜(内側の壁)の上皮、子宮の粘膜(内側の壁)=子宮内膜の上皮など。
- 重層扁平上皮
- 細胞が数層から数十層にわたって積み重なっている上皮で、上の方の細胞の形が平べったい。皮膚の表皮、口の中(口腔)、食道、膣、尿道の出口近くの上皮など。
- 重層立方上皮
- 細胞が数層以上積み重なっている上皮で、一番上の層の細胞が丸っこい、あるいは立方体に近い形。卵胞上皮細胞?
- 重層円柱上皮
- 細胞が数層以上積み重なっている上皮で、一番上の層の細胞が背が高いもの。眼の結膜、男性の尿道など。
細胞の形と層の組み合わせ、その他の例 †
- 多列円柱上皮(多列上皮)
- 一見細胞が何層にもなっているように見えるが、実は積み重なっているわけではなく、一列に並んでいるだけなのだが、背の高い細胞に、背の非常に低い細胞がまざっているもの。鼻の穴の中(鼻腔)、気管、気管支、精管など。
- 移行上皮
- 特徴は、上皮が非常に伸縮性があり、伸びたり縮んだりでき、それにあわせて上皮の見かけも大きく変化するため、この名がある。細胞は数層に積み重なって見えるが、ほんとに積み重なっているのか、上の多列上皮のようにいろいろな大きさの細胞が混ざったいるだけなのかよくわからない。上の層ほど細胞が大きい。細胞どうしのつながり方に特徴があり、引っ張られて伸びるときには細胞どうしがちょっとずつずれて一見細胞の層の数が減るように見える。尿管、膀胱、膀胱のそばの尿道などの内側の上皮。