アドレナリン
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
アドレナリンは、副腎髄質から分泌されるホルモンで、一部のニューロンの神経伝達物質でもある。エピネフリンとも呼ばれる。副腎髄質から分泌されるアドレナリンの作用は、心拍数を上昇させる、瞳孔を開く、消化機能を抑制するなどである。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | アドレナリン * | |
エピネフリン ** | |||
英語 | adrenalin, adrenaline * | アドゥレナリン | |
epinephrine, epinephrin ** | エピネフリン |
* | 日本やヨーロッパなど、米国以外で主に使われる呼び方。副腎 adrenal (アドリーナル)から分泌される物質だから |
** | 米国を中心に使われる呼び方。epinephros (エピネフロス)は副腎の別名 |
チロシンというアミノ酸を材料として作られるのでアミノ酸誘導体、モノアミンなどに分類される低分子化合物で、水溶性である。細胞内でチロシンからアドレナリンがつくられる化学変化では、まずドーパミンがつくられ、それがノルアドレナリンになったあと、アドレナリンがつくられる。ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンはみなカテコール基という構造を持っているのでカテコールアミン(=カテコラミン)に分類される。
副腎髄質からは、アドレナリン、ノルアドレナリンの両方が分泌されるが、アドレナリンを分泌する細胞が全体の80%でノルアドレナリンを分泌する細胞が残りの20%。
神経伝達物質としてアドレナリンをもっているニューロンを、アドレナリン作動性ニューロン、ノルアドレナリンをつかっているニューロンをノルアドレナリン作動性ニューロンという。中枢神経系には、アドレナリン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロンのどちらもある。末梢神経系では、交感神経の節後ニューロンが主としてノルアドレナリン作動性。
アドレナリンは、米国で研究をしていた高峰譲吉らが1900年に物質の結晶化を報告し、アドレナリンと命名した。1897年に米国のエーベル(J. J. Abel)がエピネフリンとして報告していたが、彼らが報告した物質は生理活性のある物質そのものではなく化学変化したものだったこと(報告した化学式が微妙に別の物質だった)、エーベルの方法では物質の純度が上がらず結晶化もできなかったため、国際的には高峰を実質的な発見者とするのが主流となった。しかし、米国ではアドレナリンが薬の商品名に使われ、その商標が高峰から製薬会社に譲渡されていたため、物質名としては使われないことになり、代わりにエピネフリンが使われることになったという |