異体字
異体字とは、形の違う別の漢字だが、読み方が同じで、意味も同じ漢字のこと。片方の字が、もう一方の略字であることもある。医学や解剖学で使われる用語には、そういう2つ以上の漢字(異体字など)が使える場合がある。この項目では、このような漢字について解説する。たいていの場合は、どちらの漢字を使っても間違いではない。
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注意する点は、ネット検索などコンピュータで検索をするとき。辞書では読み方、意味が同じとされていても、コンピュータ上では別の字として扱われるので、片方の字で検索しても、もう一方の字を使っているページはヒットしない。もれなく検索するには、両方の漢字で検索してみるしかない。さらに難しい漢字の場合、これに加えて、ひらがな表記されている場合も考えて検索しないといけない。
どちらでも問題なく使える異体字の場合 †
すでに一般的によく使われている異体字(略字)が何種類かある場合、解剖学ではそのうちのどれを使うのが正しい、というのは決まっておらず、基本的にどちらを使っても問題ない。教科書によってどちらの字を採用しているのかが違っていたりすることはよくある。
本来は異体字ではない別字で代用する場合 †
かつては本来の漢字を使っていたが、その字が難しいなどの理由で、簡単な別の字で代用するのが広まったという場合がある。代用の字は、見た目や読み方が本来の字に「なんとなく似ている」場合が多いとはいえ、あくまでも意味の違う別の字なので、本来の意味での異体字ではない。
この場合、医学・解剖学用語として本来の字の方を使うことはあまりない場合がある。一般向けの辞書には本来の字が載っているのに、医学辞典には代用の字しか載っていないこともある。
一般に使われる代用の字を解剖学では使わない場合 †
医学、解剖学で用いている字が難しい字の場合、一般に用いられている字や、高校まで学習で使う字として、異体字ではない別の字が代用されることがあるが、医学・解剖学では本来の字を使うことにこだわる場合がある。
この例でも、代用の字は、見た目や読み方が本来の字になんとなく似ている場合が多いとはいえ、意味が違う別の字なので、本来の意味での異体字ではない。
本来の字がコンピュータで扱いにくいため、略字(異体字)が一般には広まっていて、解剖学でもそれを使うことが多い場合 †
本来の字がJIS規格の第2水準までに入っていない場合、その字を表示できないコンピュータのシステムもある(環境依存文字)。この場合は、解剖学でもコンピュータでも使いやすい異体字(略字)を用いることが一般化されている。
よく使う略字 (異体字) | 本来の字 (異体字) | 読み | 用例 |
---|---|---|---|
嚢 | 囊* | のう | 精嚢 |
* 「嚢」の真ん中あたりの「八」のかわりに「口」を横に2つ並べたもの。JIS第3水準の漢字なので、旧型のOSでは表示されないかも |
新しく作られた略字(異体字)が一般には広まっていない場合 †
本来の漢字が難しいなどの理由で新らたな略字が作られたが、それが現在まで一般には使われていないマイナーな略字のままになっている場合がある。
医学、解剖学ではどちらの字を使う場合もあるが、一般に広まっていない漢字の場合、その漢字がコンピュータでは入力しにくく、OSや機種によって表示できないこともあるため非常に不便。今後使うことが多くなっていくのかどうかは不明。
* | 「経」の「糸」へんを「月」(にくづき)にした字 |
** | 「検」の「木」へんを「月」(にくづき)にした字 |
*** | 「月」(にくづき)+「斉」 |
† | 「焼」の「火」へんを「木」へんにした字 |
‡ | さんずいに「戸」 |
*~***,† | JIS 第2面(=JIS 第4水準)の漢字 |
‡ | JIS第3水準の漢字 |
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