コレステロール

『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
 

 コレステロール とは、ステロイド類に含まれる、ひとつの物質名。動物の体で使われている代表的なステロイドである。コレステロールは細胞膜などの生体膜の成分なので、どの細胞にもたくさん含まれている。また、他のステロイド類をはじめとして、いろいろな物質の材料でもあり、非常に重要。

言語表記発音、読み方
日本語医学コレステロール
英語cholesterolステロール

 最初に発見されたとき、胆嚢の中にあった胆石から見つかったので、ギリシャ語で chole コル 胆汁と stereos 「固まり」をつなげて、cholesterin 「コレステリン」という名前がつけられた。その後、この物質が-OH基をもったアルコール類であることをわかりやすくするため、最後に -ol をくっつけて、コレステロールの呼び方が一般的になった。コレステロールに構造が似ている、-OH基があるアルコール類をまとめてステロール類と呼ぶ。また、もう少し範囲を広げて、ステロール類に似ている物質を含めて(-oid 「似ている」をつけて)、ステロイド類という。

図:コレステロールの分子構造 *1
コレステロールの分子構造

体内でのコレステロール

 コレステロールは体内でもつくられるし、食べ物からも取り込める。食べ物に含まれているコレステロールが小腸から吸収されると、それは一旦肝臓に送られる。また、体内でコレステロールが主につくられるのは、肝臓である。その後、全身のすべての細胞へと運ばれる。体の中で余ったコレステロールは再び肝臓に集められ、胆汁酸にされて胆汁の成分として腸(十二指腸)に出される。

コレステロールの生合成

 肝臓で、アセチルCoAを材料としてつくられる。メバロン酸、スクワレンを経て合成される。

 すべてのステロイド類は、コレステロールからつくられる。たとえば、ステロイドホルモンもコレステロールから合成される。肝臓でつくられたコレステロールは、ステロイドホルモンを分泌する細胞まで運ばれた後、その細胞でホルモンに作り変えられる。

善玉コレステロールと悪玉コレステロールとは

 よく善玉コレステロールと悪玉コレステロールとがあるといわれる。しかし、コレステロールという物質そのものに何種類も区別があるわけではない。

 コレステロールは、他のステロイド類と同じように、水には溶けないので、血液中を運ばれるときには、タンパク質や他の脂質と結合して水に溶ける複合体(リポ蛋白質)の形で運搬される。よくいわれる、善玉コレステロールと悪玉コレステロールというのは、この複合体に性質の違うものが何種類かあるという話。コレステロールと一緒に複合体を作る相手の物質の組み合わせが異なっている。

LDL(低密度リポ蛋白質;low density lipoprotein)
 悪玉コレステロールと呼ばれている。肝臓から全身の細胞へとコレステロールを送るときに使われるタイプの複合体。
HDL(高密度リポ蛋白質;high density lipoprotein)
 善玉コレステロールと呼ばれている。主に全身の細胞から不要なコレステロールを肝臓に集めて排出するときに使われるタイプの複合体。

 血液中のコレステロールが増えると動脈硬化になりやすくなるが、これはLDLが多いときにおこりやすい。HDLとLDLでは、コレステロールと一緒に複合体を作る相手の物質の組み合わせが異なっている。

 これ以外にも、小腸で吸収されたコレステロールや脂質肝臓に運ばれるときのリポタンパク質が別にあり、これはカイロミクロン(キロミクロン)と呼ばれる。

カテゴリー: 物質名 | ステロイド


*1 Created by using BKChem chemical drawing program.
 
 

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