シャーピー線維
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
シャーピー線維とは、または、貫通線維とは、骨の表面のコラーゲン線維束が骨内部にめりこんでいる部分のこと。骨についている靭帯、腱、筋などをつなぎとめて支えるための錨(いかり,アンカー)の働きをしている。骨以外に歯のセメント質にもある。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | シャーピー線維、シャーピー繊維 * | シャーピーせんい |
貫通線維、貫通繊維 | かんつうせんい | ||
英語 | Shapey's fiber, Shapey fiber * | シャーピー(ズ)・ファイバー | |
perforating fiber | パーフォレイティング・ファイバー |
* | シャーピーとは、イギリスのスコットランドの組織学者であるウィリアム・シャーピー(William Sharpey)のこと。骨組織の研究をした人 |
骨の表面には骨膜がある。骨膜の主な成分はコラーゲン線維で、その一部のコラーゲン線維の端は骨内部にもぐりこんで固定されている(骨の表面からコラーゲン線維が生えている、とも言える)。骨にくっついている靭帯、腱,筋などは骨膜とつながっているが、これらが骨としっかりくっついているのはシャーピー線維のおかげである。
骨をつくる骨基質には、I型コラーゲンがたくさん含まれているが、骨基質のコラーゲンは太いコラーゲン線維をつくらず、ごく細いコラーゲン細線維としてちらばっていて、骨の弾力のもとになっている。シャーピー線維も同じI型コラーゲンからできているが、こちらは骨膜と同じくコラーゲンが束になって太いコラーゲン線維束をつくっている。
歯を歯槽骨に固定するコラーゲン線維も、歯の根元(歯根)の表面にあるセメント質にもぐりこんでいる。これも骨の表面の線維とよく似ていて、シャーピー線維と呼ぶ。つまり、歯を固定するコラーゲン線維は一方の端が歯のセメント質に固定され、反対側の端が歯を囲んでいる歯槽骨に固定されているので、両側がシャーピー線維である。
元の意味から広がり、骨やセメント質の内部に入り込んでいる部分だけでなく、これとつながって骨や歯の表面から外に出ている部分のコラーゲン線維もシャーピー線維と呼ぶ場合もある。