歯 のバックアップ(No.5)

『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
 

 とは、口のなか(口腔)にある、に似た硬い構造で、骨と共に硬組織に分類される。その硬さは骨よりも硬く、人体でもっとも硬い(とくに、歯のエナメル質が一番硬い)。上あごの骨と下あごの骨に沿ってずらりとならんで生える(これを歯列という)。口腔は歯列を境にして、歯よりも奥(などのある場所)を固有口腔、歯とくちびる(口唇)の間のすき間を口腔前庭という。歯は食べ物を噛み砕く(咀嚼する)のに重要だが、それだけでなく、言葉をしゃべる(構音)のにも関係するし、歯(や動物の)は攻撃や防御にも重要である。

言語表記発音、読み方
日本語医学
英語単数toothトゥース
複数teethティース
ラテン語単数densデンス
複数dentesデンテス

歯の名前

 歯の種類と数、並ぶ順番は決まっている。大きく分けて、前歯(切歯)、糸切り歯(犬歯)、奥歯(臼歯)の3種類がある。前歯(切歯)は、前面中央に2本、上下左右で計8本。糸切り歯(犬歯)は、前歯の横に1本、上下左右で計4本。奥歯(臼歯)は、大人では親知らずを入れて5本、上下左右で計20本だが、子供では2本しかなく、上下左右で計8本。合計すると子供では5本、上下左右をあわせて20本。大人では8本(親知らずがないと7本)、上下左右をあわせて32本(親知らずがないと28本)である。「歯式」とは、こういった歯の配列を記号・番号で表す方式のこと。

 ヒトでは、歯は一生に1回生えかわる(乳歯永久歯)。奥歯の一部は、乳歯の生える子供の頃にはなく、最初に生えてきた歯が永久歯のものもある。乳歯が抜けたあとで生えてくる永久歯を代生歯、乳歯が生えていないところに最初から永久歯が生えてくるものを加生歯という。代生歯と加生歯をあわせて永久歯。ふつう、切歯、犬歯、小臼歯が代生歯で、大臼歯は加生歯。

一般的な名前と解剖学の名前

一般の名前解剖学の名前乳歯永久歯
前歯切歯(門歯*) せっし(もんし)中切歯(門歯*) ちゅうせっし(もんし)○**
側切歯(そくせっし)
糸切り歯犬歯(けんし)
奥歯臼歯(きゅうし)小臼歯(しょうきゅうし)第1小臼歯(だい1しょうきゅうし)
第2小臼歯(だい2しょうきゅうし)
大臼歯(だいきゅうし)第1大臼歯(だい1だいきゅうし)×**
第2大臼歯(だい2だいきゅうし)×
奥歯(親知らず)第3大臼歯、智歯(だい3だいきゅうし、ちし)×△***
* 門歯は、動物でよく使い、ヒトではあまり使わない。門歯を切歯の意味で使うときと、中切歯の意味で使う時がある
** ○ … ある、 × … ない
*** △ 親知らず(智歯)は生える時期が遅い歯だが、もともとない人、あっても生えない人もいる

解剖学の名前と英語名

解剖学の名前英語の名前(発音)
切歯incisorインイザー
 中切歯central incisorントラル・インイザー
側切歯lateral incisorテラル・インイザー
犬歯canine、cuspidイナイン、スピッド
臼歯molar *ウラー
 小臼歯premolarプリウラー
 第1小臼歯first premolarファースト・プリウラー
第2小臼歯second premolarカンド・プリウラー
大臼歯molar *ウラー
 第1大臼歯first molarファースト・ウラー
第2大臼歯second molarカンド・ウラー
第3大臼歯
智歯
third molar
wisdom tooth
ード・ウラー
ウィズダム・トゥース
* molar は、臼歯(奥歯)の意味でも、そのうちの大臼歯だけの意味でも使うことがある

歯の構造

 歯や牙をあわせて歯牙組織という。

 歯は顎の骨から直接生えているわけではなく、顎の骨の歯の部分には歯の形よりも少し大きめのくぼみ(歯槽)が開いていて、歯はそのくぼみにはまっている。歯と骨の間には非常に強いコラーゲン線維の束を含む結合組織(歯根膜)があって、歯を支えてつないでいる。

 歯のうち、歯槽に埋まっている部分を歯根、表面に出ている部分を歯冠、その間を歯頚という。歯のほとんどは象牙質という組織でできていて、表面だけは、歯冠ではエナメル質、歯根ではセメント質でおおわれている。歯の中心には歯髄腔という空洞があり、なかの組織を歯髄という。歯髄には歯根側の歯のそとから血管神経が入り込む。

他の動物の歯

 動物の牙も歯の一種で、哺乳類ではヒトと似た歯が生える。象牙をとるゾウの牙(キバ)など哺乳類の牙は発達した歯である。鳥では基本的に歯がなく、爬虫類でも歯が生えていない種も多い。魚類では歯があるのが多いが、魚の歯は哺乳類のとはかなり違う。

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<ご注意> 『1年生の解剖学辞典』は、解剖学を学んでいる人によって書かれているはずですが、間違いがあるかもしれません。内容はかならず教科書その他で確認してください。また間違いをみつけたら「編集」から直していただくか、「ノート」にコメントを残していただけるとうれしいです。
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