ミュラー管
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
中腎傍管でこの項目を参照しています
ミュラー管とは、または 中腎傍管とは、胎児のときにだけある管で、中腎(胎児の腎臓)の近くに作られ、総排泄腔までつながる管。男性では退化してなくなり、女性では卵管、子宮、腟などの女性生殖器の一部のもとになる。ミュラーは人名で、ヨハネス・ミュラー(Johanness P. Müller)のこと。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | ミュラー管 | ミュラーかん |
中腎傍管 | ちゅうじんぼうかん | ||
英語 | müllerian duct *, ** | ミューレリアン・ダクト | |
Müller duct ** | ミュラー・ダクト | ||
paramesonephric duct | パラメソネフリック・ダクト | ||
ラテン語 | ductus paramesonephricus | ドゥクトゥス・パラメソネプフリクス |
* | müllerian は、Müller が一般名詞化・形容詞化したもので、ヨハネス・ミュラーの~、または ミュラー管の~ という意味。ミュラーという人は解剖学に何人か出てくるが他のミュラーには使わない |
** | Müller, müllerian では ü (ユー ウムラウト)が使われている。ü は、ウムラウトを使わないときは、u または ue と書くので、Mueller, Muller, muellerian, mullerian と書く場合もある |
ミュラー管は、一旦は、男性と女性、両方の胎児に形成される管で、卵巣(男性では精巣)と総排泄腔との間に走る左右1対の管。すぐとなりにウォルフ管(中腎管)が走っていることから、中腎“傍”管の名前がある。
その後、男性のミュラー管は退化してなくなってしまう。一方、女性のミュラー管は、どんどん大きく発達し、総排泄腔に近い下半分では左右の管が融合し、1本の管になる。卵巣側の融合していない部分が卵管になり、左右が融合した場所が子宮と膣になる。
男性でミュラー管が退化するのは、精巣のセルトリ細胞から分泌されるホルモン、ミュラー管抑制因子(=抗ミュラー管ホルモン)の働きによる。女性では、精巣がないので、ミュラー管は退化しないで残る。ちなみに、男性生殖器の一部は、ミュラー管ではなく、ウォルフ管(中腎管)からできる。中腎管は、精巣のライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)がないと退化してしまうので、女性では退化してしまう。
- ネット検索で出てくる「ミュラー管」には、ガイガー・ミュラー管もある。これは放射線を検出する装置である「ガイガーカウンター」に使うものなので、全く別物 |