卵管
卵管とは、女性生殖器系に含まれる器官のひとつ。直径が数 mm で、長さが10 cm ほどの細い管で、左右1対ある。それぞれ子宮の上端の左右(=子宮角)から出て、横方向に伸びている。子宮から遠い側の端は卵巣のすぐそばで終わっている(つながってはいない)。卵巣から排卵された卵が、子宮にたどり着くときに通る管。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | 卵管 | らんかん |
ファローピウス管* | ファローピウスかん | ||
ファロピーオ管* | ファロピーオかん | ||
医学以外 | 輸卵管** | ゆらんかん | |
一般 | 喇叭管、ラッパ管*** | らっぱかん | |
英語 | oviduct† | オヴィダクト | |
uterine tube‡ | ユーテライン・テューブ | ||
fallopian tube Fallopian tube‡† | ファロゥピアン・テューブ | ||
英語・ラテン語 | salpinx*** | サルピンクス | |
ラテン語 | tuba uterina | テュバ・ウテリナ |
* | 発見者のイタリア人解剖学者 ガブリエレ・ファロッピオの名前をつけて、ラテン語名でファローピウス管(またはファロピウス管)、またはイタリア語表記を使って、ファロピーオ管(ファロピオ管)と呼ばれる |
** | 輸卵管は医学用語としてはあまり使わない。ヒト以外の動物、特に哺乳類以外の動物ではよく使う。輸卵管の項目を参照 |
*** | ギリシャ語由来。喇叭管と Salpinx は対応する言葉で、端がトランペットのようにひろがっている形からつけられた。喇叭管は ギリシャ語の Salpinx を直訳した言葉 |
† | oviduct は、ラテン語の卵 ovum オーヴァム の管 duct の意味 |
‡ | uterine tube は直訳だと「子宮管」の意味 |
‡† | fallopian は、人名のファロピーオ Falloppio が一般名詞になって形容詞化(ファロピーオの~)したものなので、頭が小文字になることもある。日本語でファロピアン管とはあまり呼ばない |
卵管は、胎児の時代のミュラー管(中腎傍管)の一部が変化してできたもの。ミュラー管からは、卵管、子宮、膣の上部までができるが、ヒトでは、子宮と膣は左右のミュラー管が融合して1つになっている。
つまり、卵管は、精管と名前が似ているが、同じ由来のものではない。卵管の元になるミュラー管は男性では退化してしまうから。精管はウォルフ管(中腎管)が元になってできる。ウォルフ管は女性では退化してしまう |
もう少し詳しい構造 †
卵管の内部の空間は、子宮の内側の空間(=子宮腔)につながっている。つながっている場所は、子宮の上端の左右の部分である(子宮腔の上端を子宮底、その左右端を子宮角という)。子宮とは反対の端では、卵巣と直接つながってはおらず、卵管は腹膜を突き破っている、したがって、卵管の内側は腹膜腔とつながって開いている。
排卵された卵は、卵巣の周りの腹膜を突き破って、腹膜腔に入り、その後、卵管内に吸い込まれる。卵管の内側の粘膜には線毛(=繊毛)が生えていて、卵管のなかの液体は、卵巣から子宮方向へのゆっくりと流れているので、卵はこの流れに乗って卵管に吸い込まれる。卵管の端は、卵を吸い込みやすいように卵巣のすぐそばにあるだけでなく、卵管の壁を作っている平滑筋層がうねるように収縮するため、卵管の端は、卵巣のそばをさまようように動いて、卵をうまく吸い込める確率を増やしている。
卵管内を卵が流れているとき、子宮側から精子が流れに逆らって泳いでくると、卵はここで受精し、その後、子宮までたどり着いて、子宮の内側の壁(=子宮内膜)に着床する。
卵管の部分の名前 †
卵管の腹膜腔に開いた側は、管がラッパのように広がり、いちばん端はたくさんの花びらのような突起がある。花びらのような部分を卵管采(らんかんさい)、ラッパのように広がっている部分を卵管漏斗(らんかんろうと)という。
卵管漏斗に続く部分、卵管のうちの子宮から遠い部分は、管が比較的太いので卵管膨大部、子宮の側は細いので、卵管峡部(らんかんきょうぶ)という。子宮に接続された後は、卵管の管が子宮腔にたどり着くまでに、子宮の壁を貫通する部分を、卵管子宮部(卵管間質部)という。