奇静脈
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
奇静脈とは、体幹(胴体)にある静脈で、右側の多数の肋間動脈から流れ込んだ血液を上大静脈に流す血管。奇静脈という名前は、azygos vein (アザガス・ヴェイン)の訳で、一つしかない、対を成さない静脈の意味(zygo- は、対になっている、結合した、の意味で、それに否定をあらわす a- がついている)。ほんとに1本しかない訳ではなく、左側にある静脈は少し走り方が違い、半奇静脈、副半奇静脈という別の名前がついているだけ。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
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日本語 | 医学 | 奇静脈 | きじょうみゃく |
英語 | azygos vein azygous vein | アザガス・ヴェイン エィザイガス・ヴェイン | |
ラテン語 | vena azygos | ウェーナ・アズィゴス |
体壁(胴体の内臓を囲む筋と骨でできた壁の部分)に血液を供給する血管は、胸部は肋間動脈、腹部は腰動脈で、これらは大動脈から、椎骨の位置に対応するように何対も出ている。これらから戻ってくる血管が肋間静脈や腰静脈で、これらは背骨(脊柱)の左右を上下方向に走る静脈に合流する。この背骨の左右を縦方向に走る1対の血管は、場所によって名前が違い、右側の上部(肋間静脈が合流する部分)は奇静脈、その下の右の腰静脈が合流する部分は右上行腰静脈、左側では、上部に副半奇静脈、その下に半奇静脈、左上行腰静脈という。これらはすべて右側にある奇静脈へ合流するが、上大静脈に流れ込む他、左右の総腸骨静脈や下大静脈とつながるところもある。