滑車神経
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
滑車神経とは、第4脳神経の名前。外眼筋(眼球の向きを変える筋)のうち、上斜筋のみを支配する運動性の脳神経。中脳を出て、眼球のある眼窩に進む。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | 滑車神経* | かっしゃしんけい |
第4脳神経、第IV脳神経 | だい4のうしんけい | ||
略語 | CN IV | スィ―・エヌ・フォー | |
英語 | trochlear nerve | トゥロクリアー・ナーヴ | |
fourth cranial nerve, cranial nerve IV | フォース・クレイニアル・ナーヴ | ||
ラテン語 | nervus trochlearis | ネルウス・トゥロクリアリス |
動眼神経が頭蓋から出て眼窩に入るときに通るのは、上眼窩裂。上眼窩裂には滑車神経の他にも、動眼神経、外転神経、三叉神経の第1枝である眼神経が通る。
滑車神経は、運動性ニューロンの神経線維からできている。運動性ニューロンが支配するのは、眼球を動かす外眼筋6つのうち、上斜筋のみ。上斜筋の腱の途中が滑車によって走行が変わる仕組みを持つことから、滑車神経の名がある。
運動ニューロンは、中脳の被蓋(中脳水道の腹側)にある滑車神経核に細胞体がある。滑車神経核から出る軸索は脳幹を背側に進み、脳幹の背面から出る。滑車神経は脳幹の背面から出る唯一の脳神経である。また滑車神経核と滑車神経が中脳から出るところの間で、左右の神経線維が入れ替わる。これは他の脳神経とは違っていて、大脳皮質の運動中枢が筋の運動を支配する際、左右の反対側の筋を支配するが、他の脳神経核では運動中枢から脳神経核までの間で左右が入れ替わり、脳神経核の先では入れ替わりはない。一方、滑車神経では運動中枢と滑車神経核との間では左右の神経線維の入れ替わりはない。