線維
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
線維とは、または繊維とは、ごく細い糸状の構造を指して呼ぶ言い方。
* | 線 維 と 繊 維、どちらの漢字も使うが、解剖学(医学)用語ではどちらかというと 線 の字を使うのが普通。異体字を参照 |
** | 英語では fiber よりも細い線維を、特に fibril(細線維)と呼ぶことがある |
*** | fibre は英国式のつづり。発音は同じ |
生体内の「線維」 †
生体内で線維という言葉を使って呼ばれる代表的なものには、下のようなものがある。
- 主に、蛋白質などの高分子でできた糸状の構造のこと。細胞内外にさまざまな種類が存在し、たいていはある程度以上の強度をもっているので、体内のさまざまな構造を支える働きをしていることが多い。代表的なのは、コラーゲン線維(膠原線維)。これは、コラーゲンという蛋白質がたくさん集まって、全体として細長い糸状になったもので、生体内では細胞外に非常に多量に存在し、いろいろな結合組織の主要な成分となっている。ひっぱり力に強いため、コラーゲン線維があると、構造が壊れにくくなる働きがある。ほかに、細胞外にある線維では、弾性線維、細網線維など、構成している蛋白質の種類がコラーゲン線維とは異なるものがいろいろある。線維と呼ばれる成分は細胞内にもあり、すべての細胞の形を維持する細胞骨格として働いているアクチンなどからできた細線維や、チューブリン蛋白質からできていて微小管とも呼ばれる太い線維、筋肉の運動をおこすおおもとである、筋細胞のなかにあるミオシン線維、アクチン線維など。
- 神経細胞の細胞の一部が細長く伸びだした神経線維。軸索と同じ意味。
- 筋細胞は、1個の細胞の形が非常に細長いので、筋細胞のことを筋線維ともいう。
- 食物中に含まれ、小腸を通りすぎても消化されずに残っている、さまざまな糸状の高分子をまとめて線維、または、食物線維と呼ぶ。「食物」を付けるのは、上に上げたような体を構成しているタンパク質でできた線維と区別するため。