肋間筋

『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
 

 肋間筋とは、肋骨の間のすき間(=肋間隙、ろっかんげき)をふさいでいる薄いのこと。肋骨とともに胸の内臓心臓など)を守る胸壁をつくっている。骨格筋で、自分の意思で収縮できる随意筋である。肋間筋が収縮すると、肋骨が全体として上下に移動することで肺への空気の出し入れを助ける「呼吸筋」である。層に分かれていて、表面に近い側から外肋間筋内肋間筋(と、最内肋間筋)がある。

言語表記発音、読み方
日本語医学肋間筋ろっかんきん
英語intercostal muscle(s) *インター-スタル・ッスル(ズ)
intercostalis muscle(s) *インター-スタリス・ッスル(ズ)
ラテン語単数musculus intercostalisムスクルス・インター-コスタリス
複数musculi intercostales *ムスクリ・インター-コスターレス
* 肋間筋は外肋間筋内肋間筋最内肋間筋をあわせた言い方であることと、どの肋間筋も、たくさんの肋骨の間にあるので、多数あることから、複数形を使う場合が多い
図:肋間筋(左斜め前から見たところ) *1
肋間筋のうち、もっとも表面にあるのは外肋間筋(ピンク  )で、その奥にある内肋間筋(オレンジ  )が一部だけ見えている。これは外肋間筋と内肋間筋のある位置が少しずれているためで、外肋間筋は肋軟骨の部分にはつかない。内肋間筋は胸骨の近くまである。最内肋間筋は内肋間筋に完全に隠れて見えない
肋間筋

外肋間筋と内肋間筋の機能の違い

 肋間筋は皮膚に近い側から、外肋間筋内肋間筋最内肋間筋という3層に分かれている。肋間筋は上下の肋骨を斜めにつないでいるが、外肋間筋と内肋間筋は筋線維の走る向きが違う。外肋間筋では上の肋骨に付く側が胸骨のある側から遠く、下の肋骨に付く側が近い。内肋間筋は、上の肋骨に付く側が胸骨のある側に近く、下の肋骨に付く側が遠い。左右の肋間筋を対にして考えると、外肋間筋の走行は「逆ハの字」、内肋間筋の走行は「ハの字」と説明される。

図:外肋間筋と内肋間筋の筋線維の走行の向き(左斜め前から見たところ) *2
外肋間筋(ピンク  )と、その奥にある内肋間筋(オレンジ  )は、どちらも筋線維が肋骨に対して斜めに走るが、斜めの向きが逆になっている。外肋間筋が収縮すると肋骨が上がる。内肋間筋が収縮すると肋骨は下がる
外肋間筋と内肋間筋の走行

 この違いによって、外肋間筋内肋間筋が収縮したときの肋骨の運動が異なる。外肋間筋が収縮すると、肋骨全体が上に持ち上がり、内肋間筋が収縮すると、逆に肋骨全体が下がる。ちなみに、肋骨全体が持ち上がると胸腔(肋骨に囲まれる胸の内臓のある空間)は広がり、肋骨全体が下がると胸腔は狭まる。は肋骨と肋間筋の作る胸壁にぴったりくっついて収まっているので、胸腔が広がると、肺も外側に引っ張られて広がり、胸腔は狭まると肺も押されて縮む。つまり、外肋間筋が収縮すると、肺が広がり(=息を吸う、吸気)、内肋間筋が収縮すると、肺が縮む(=息を吐き出す、呼気)。

 最内肋間筋の筋線維は内肋間筋と同じ向きに走り、内肋間筋と一緒に収縮するので、内肋間筋の機能と同じ。内肋間筋と最内肋間筋の間には、神経肋間神経)や血管肋間動脈肋間静脈)が走るため、この2層に分かれている。

肋間筋の神経支配

 肋間筋の運動を支配している神経は、肋間神経である。肋間神経は、脊髄のうち、胸髄から出る胸神経前枝から起こり、肋骨の間のすき間(肋間隙)を通る。第1肋骨の下を通るのが第1肋間神経で、第12肋骨の下を通るのを肋下神経という。

食肉の部位としては

 肋間筋は、バラ肉と呼ばれる。バラ肉の「バラ」は「あばら骨」(=肋骨)のこと。肋骨に肋間筋がついたものを英語ではスペアリブという。バラ肉のことを朝鮮語(韓国語)ではカルビという。

カテゴリー: 運動器系 | 筋系 | | 胸部 | 呼吸器系


*1 Source: BodyParts3D, © ライフサイエンス統合データベースセンター licensed under CC表示 継承2.1 日本 80x15.png
*2 Source: BodyParts3D, © ライフサイエンス統合データベースセンター licensed under CC表示 継承2.1 日本 80x15.png
 
 

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