パイエル板 のバックアップ(No.1)
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
パイエル板とは、小腸の壁の内側の粘膜にある、直径数 cm 以下の楕円形をした部分で、小腸の壁に何十個もある。パイエル板の部分の粘膜は、周囲の粘膜より少し厚ぼったく盛り上がっていて、その内部にはリンパ小節がたくさん埋まっている。ほとんどは回腸にあるので、回腸を他の小腸の部分(十二指腸、空腸)から区別できる点のひとつである。
パイエルとは、17世紀後半~18世紀はじめのスイスの解剖学者、ヨハン・コンラート・パイヤー(パイエル)(Johann Conrad Peyer)の名前から。
リンパ小節がたくさん集まっているのを集合リンパ小節というが、パイエル板は、集合リンパ小節の一種である。パイエル板のリンパ小節は、粘膜の表面を覆っている上皮の下の結合組織の層(=粘膜固有層)に敷きつめられるように平面的に並んでいて、粘膜内だけでなく、その外側の粘膜下層にまではみ出している。小腸の壁の内側には絨毛(=柔突起)がびっしりと生えているが、パイエル板のあるところは絨毛がないか発達していないため、そこだけ平らになっているため「板」という名前がついている。パイエル板の部分の上皮には、M細胞という免疫系の細胞がまざっている。
パイエル板は回腸に多いが、特に多いのが大腸との境界の回盲弁の近く(=遠位の小腸)で、胃側にさかのぼるに従って少なくなる。また、腸間膜(小腸間膜)のついている側とは反対側の壁に多い。