グリア細胞
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
神経膠細胞でこの項目を参照しています
グリア細胞とは、またはグリアとは、ニューロン(神経細胞)の働きを様々な角度からサポートする何種類かの細胞をまとめて呼ぶ名前で、ニューロンとともに神経組織をつくる細胞。ニューロンとは違って、グリア細胞は興奮によって情報を伝えるはたらきはない。神経膠細胞ともいう。
教科書や医学辞書などでは定義が2種類に分かれていて、
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | グリア細胞 | グリアさいぼう |
グリア * | グリア | ||
神経膠細胞** | しんけいこうさいぼう | ||
英語 | glial cell | グリアル・セル | |
glia cell | グリア・セル | ||
glia* | グリア | ||
neuroglia** | ニューログリア |
* | グリア(glia) = グリア細胞(glial cell)と考えてよいが、神経組織のうち、神経細胞以外の部分を全体としてグリア(神経膠)と呼んで、それを構成しているグリア細胞とは区別して呼ぶこともある |
** | むかしはグリア細胞は神経細胞どうしをつなぎとめて支える糊(のり)の働きをしていると考えられていたので、neuroglia (神経の糊)と名付けられた。それを訳したのが神経膠、または神経膠細胞。glia はギリシャ語で糊の意味で、「膠」は「にかわ」 |
中枢神経系の神経組織は、主として、神経細胞とこのグリア細胞の2タイプの細胞からできている(血管の細胞を除く)。ふつう神経組織では、グリア細胞のほうが神経細胞よりもずっと数が多く、神経細胞の10倍の数のグリア細胞があるといわれている。神経細胞は大型の細胞だが、グリア細胞はそれよりもずっと小型。神経細胞は、遠くまで神経線維を伸ばして別の神経細胞とシナプスをつくるが、グリア細胞は細胞から突起が出ているものの、その長さは神経細胞よりもずっと短い。シナプスを作ることもない。
中枢神経系のグリア細胞の種類 †
グリア細胞は、何種類かの別の働きを持った細胞をまとめていう呼び名。代表的なのは下の3種類。
- アストロサイト
- 星状膠細胞、アストログリアなどとも。脳や脊髄の内部の毛細血管のまわりを取り囲み、血液中の物質と神経細胞の間のバリアをつくったり、逆に特定の物質だけを運んだりする
- オリゴデンドロサイト
- 希突起膠細胞、乏突起膠細胞、稀突起膠細胞、オリゴデンドログリアなどとも。脳や脊髄の内部で、神経線維の周囲のさや、特にミエリン鞘をつくる細胞
- ミクログリア
- 小膠細胞ともいう。食作用のある細胞で、異物などを貪食(どんしょく)する、マクロファージのような細胞
他に、脳室と脳(脊髄)の組織との境目に、1層の細胞層をつくっている上衣細胞もグリア細胞に分類される。
中枢神経系のグリア細胞は、小膠細胞以外は、神経細胞と同じ共通の神経幹細胞から分かれてくる細胞。
末梢神経系のグリア細胞の種類 †
(グリア細胞の定義によっては、末梢神経系の細胞はグリア細胞に含めないことがある)
- シュワン細胞
- 体中を走る神経で、神経線維(軸索)の1本1本を包む「さや」(髄鞘またはミエリン鞘)をつくっている細胞。中枢神経系のオリゴデンドロサイトにあたる
末梢神経系のグリア細胞は、末梢神経系のニューロンと同じく、神経堤の細胞から分かれてくる細胞。