機能血管
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
機能血管とは、一部の器官(臓器)にだけ存在する血管で、その器官に血液を送り届ける血管のうち、その役割がふつうの動脈のようにその器官に酸素を供給することではなく、それ以外の別の働きのある血管のこと。これは、その器官の果たす機能と関係するため、機能血管と呼ばれる。これに対して、器官に酸素を供給するふつうの血管(動脈)を、栄養血管と呼ぶ。栄養血管はどの器官にも必ずあるが、機能血管があるのは、ごく一部の器官だけ。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | 機能血管 | きのうけっかん |
英語 | functional vessel | ファンクショナル・ヴェッセル |
機能血管の例 †
- 肝臓の門脈(肝門脈)
- 腸や脾臓、膵臓などを通ってきた、酸素をあまり含まない血液(=静脈血)を肝臓に送る働きがある。門脈を通る血液には、腸で吸収した栄養や毒物、脾臓で分解された赤血球からできたビリルビン、膵臓でランゲルハンス島から分泌されたホルモンなどが含まれ、肝臓に届けられる。肝臓に酸素を送る栄養血管は肝動脈(固有肝動脈)である
- 肺の肺動脈
- 肺動脈を通って肺に送られるのは全身から大静脈を通って戻ってきた酸素をあまり含まない血液。これを肺胞壁に通すことで二酸化炭素と酸素を交換する。肺に酸素を供給する栄養血管はこれとは別に気管支動脈がある
- 心臓の4つの部屋(2つの心房と2つの心室)
- 心臓には (1) 大静脈 → 右心房 → 右心室 → 肺動脈、(2) 肺静脈 → 左心房 → 左心室 → 大動脈という2つの系統の血液循環がある。これらの経路は全身や肺に血液を送るという心臓の機能を果たすための機能血管といえる。心房と心室の心筋は、常に動き続けているので大量に酸素が必要だが、心房と心室の中を通り過ぎる血液からは厚い心臓の壁のすべてに血液を供給できないし、上の(1)の血管系を通る血液は特に酸素をあまり含まない血液(静脈血)である。心臓壁に酸素を送る栄養血管は冠状動脈(右冠状動脈と左冠状動脈)である