前鋸筋 のバックアップ(No.1)
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
前鋸筋(ぜんきょきん)とは、肩甲骨を動かす筋のひとつ。肩甲骨を外側、前方に引っ張る骨格筋。前鋸筋の本体は肩甲骨の深層(肩甲骨の裏側または肩甲骨の前方)にある。別の言い方をすると、肩甲骨と胸郭(肋骨でできた胸壁)とのすき間にある平べったい筋。
前鋸筋は肩甲骨と胸郭をつないでいる。胸郭につく端が「起始」で、胸郭の側面で多数の肋骨からはじめる。肩甲骨に付いている側が「停止」にあたり、肩甲骨の内側縁に付いている。前鋸筋が収縮すると肩甲骨の内側縁を外側、前方に引き寄せることになる。この動きは、鎖骨と肩甲骨からなる上肢帯を正中から離す動きなので、上肢帯の外転という。
前鋸筋の支配神経は腕神経叢から出る長胸神経。前鋸筋の拮抗筋は、肩甲骨を内側に引き寄せる(=内転させる)菱形筋、小胸筋、僧帽筋など。
前鋸筋の名前は、前方にあるノコギリ形の筋の意味で、前鋸筋が肋骨につく部分の端の形が、肋骨ごとに三角形に入り組んでギザギザしているため。ノコギリの名前のつくもうひとつの後鋸筋は、背骨(椎骨の棘突起)と肋骨をつないでいる深いところにある筋で、こちらは肩甲骨に付く筋ではない。