僧帽 のバックアップ(No.5)

『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
 

 僧帽とは、僧侶のかぶる帽子のことで、解剖学では、僧帽筋僧帽弁に出てくるが、僧帽筋の「僧帽」と、僧帽弁の「僧帽」はまったく別のもの。ちなみに、ここで出てくる僧侶とは、日本の仏教のお坊さんではなく、(ヨーロッパの)キリスト教の聖職者のこと。

僧帽の付く用語

  • 僧帽筋:修道僧のフード(cowl)の形に似ている
  • 僧帽弁:儀式用の司教冠(mitra)の形に似ている

 日本語の用語がつくられたとき、それらを区別せずに同じ言葉に訳してしまった。

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僧帽筋

僧帽に関連する内容があります

 僧帽筋とは、の後ろ(項部)から背中の上部、にかけて広がる大型ので、この部位でもっとも表層にある筋。働きは、背骨(脊柱)から肩甲骨鎖骨を引っ張ることで、上肢全体を支えている。肩こりの原因となる筋のひとつ。

言語表記発音、読み方
日本語医学僧帽筋 *そうぼうきん
英語trapezius (muscle) **トゥラーズィアス(・ッスル)
cowl muscle *ウル・ッスル
ラテン語musculus trapezius **ムスクルス・トラペズィウス
* 僧帽筋は cowl muscle の訳で、カトリックの僧侶のつける頭巾(フード)の形から
** trapezius は、ラテン語で台形の意味。背中側から見ると左右あわせた僧帽筋は、ダイヤ型をしているため
図:僧帽筋(後ろから見たところ) *1
僧帽筋(赤  )は首の後面から背中の上半分にかけて最表層に広がるひし形の筋
僧帽筋
絵画(一部): カトリック(カプチン会)修道士の僧服。修道士のローブのフード部分の形が僧帽筋の名前の由来 フランソワ・マリウス・グラネ作 (1825) 『カプチン修道院のマレシャル・ド・ジョワイユーズ』 (Francois Marius Granet : Le Maréchal de Joyeuse au couvent des Capucins, 1825) スコットランド・ナショナル・ギャラリー所蔵 *2
僧帽筋の名前の由来

起始と停止

 起始は頭蓋外後頭隆起と項靱帯、及び第7頚椎〜第12胸椎の棘突起。停止は鎖骨の外側部、肩甲骨肩峰から肩甲棘の全体にかけて。

図:僧帽筋(後ろから見たところ) *3
僧帽筋(赤  )は、後頭骨(黄色  )~脊柱(緑  )(第12胸椎より上)から起こり、鎖骨(見えない)と肩甲骨(青  )に停止する
僧帽筋
図:僧帽筋(右斜め上から見たところ) *4
僧帽筋(赤  )は、後頭骨(黄色  )~脊柱(緑  )(第12胸椎より上)から起こり、鎖骨(水色  )と肩甲骨(青  )に停止する
僧帽筋

働き

 肩甲骨と、肩甲骨の支点となる鎖骨につき、肩甲骨さらには上肢を支えている。肩をすくめる動きのとき、肩甲骨を上に引き上げる動き(挙上)や、上肢を真上に挙げるとき、肩甲骨を回転させ、肩関節を斜め上に向ける動き(外転)など。

神経と血管

 大きな筋で、上部と下部で支配神経が異なる。上部は第11脳神経副神経、下部は頚神経叢(第1~4頚神経前枝)の支配。

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僧帽弁

左房室弁二尖弁でこの項目を参照しています

僧帽に関連する内容があります

 僧帽弁とは、心臓内にあるのひとつ。弁は血液が逆流しようとすると閉まり、正しい方向に流れようとするときに開くようになっている。僧帽弁は、左心房左心室の間にあり、心室から心房に向かって血液が戻ろうとすると閉まる逆流防止の役割がある。

言語表記発音、読み方
日本語医学僧帽弁 *そうぼうべん
左房室弁さぼうしつべん
二尖弁 **にせんべん
英語mitral valve *イトラル・ヴァルヴ
left atrioventricular valveフト・エイトゥリオ-ヴェントゥリキュラー・ヴァルヴ
bicuspid valveバイスピッド・ヴァルヴ
ラテン語valva mitralis *ウァルア・ミトゥラリス
valva atrioventricularis sinistraウァルア・アトゥリオ-ウェントゥリクラリス・スィニストゥラ
valva bicuspidalisウァルア・ビクスピダリス
* 僧帽弁の僧帽は、mitra(キリスト教の司教冠)の訳
** 二尖弁はあまり使わない
写真:式典に列席する司教(聖リボリウス祭、2005年、ドイツ、パーダーボルンにて)。司教冠の形が僧帽弁の名前の由来*5
僧帽弁の名前の由来(司教冠)

 左心房左心室との間にあるので、左房室弁という名前もある。構造は、のフタがヨットの帆のように心室側から引っ張られて支えられているタイプ(帆状弁)で、弁のフタ(弁尖)が2つにわかれている。先が2つにわかれた弁の形が、キリスト教の司教が儀式のときにかぶる帽子(司教冠)に似ていることから僧帽弁の名前がついた。

 右心房右心室との間の右房室弁)も、僧帽弁と同じく、帆のような弁だが、弁のフタが3つにわかれていて、三尖弁と呼ばれる。

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*1 Source: BodyParts3D, © ライフサイエンス統合データベースセンター licensed under CC表示 継承2.1 日本 80x15.png
*2 Source: National Galleries Scotland. Reproduced and Modified. Permission: CC-BY-NC. この画像はクリエイティブ・コモンズ 表示-非営利 1.0 一般ライセンスに従って再利用可能です
*3 Source: BodyParts3D, © ライフサイエンス統合データベースセンター licensed under CC表示 継承2.1 日本 80x15.png
*4 Source: BodyParts3D, © ライフサイエンス統合データベースセンター licensed under CC表示 継承2.1 日本 80x15.png
*5 Source :Bischöfliche Gäste beim Liborifest in Paderborn, Auther: Karl-Michael Soemer (Soemling). Permission: Public domain(著作者により、目的、方法を問わず、あらゆる利用が認められています). Reproduced and modified.
 
 

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