筋層
『1年生の解剖学辞典』~ 解剖学をこれから学ぶ人向けの用語解説 ~
筋層とは、筋肉がシート状にひらべったく広がって、ある程度の厚さを持った層を作っているときの呼び方。例えば、おなかの壁(腹壁)をつくっている腹筋(腹壁筋)の層や、腸の管の壁を作っている筋などが筋層と呼ばれる。
言語 | 表記 | 発音、読み方 | |
---|---|---|---|
日本語 | 医学 | 筋層 | きんそう |
英語 | muscle layer | マッスル・レイヤー | |
muscular layer | マスキュラー・レイヤー | ||
muscle coat | マッスル・コート | ||
muscular coat | マスキュラー・コート | ||
ラテン語 | tunica muscularis | (英語読み)テュニカ・マスキュラリス (ラテン語読み)トゥニカ・ムスクラリス | |
muscularis | (英語読み)マスキュラリス (ラテン語読み)ムスクラリス |
筋は筋細胞(=筋線維)が無数に集まってできているが、筋細胞は1つ1つが縮んで引っ張り力を出すことができる。筋細胞が一定の方向に配列して平面的に集まると、全体として非常に大きな力を出すことができる「筋肉の壁」をつくれる。なにかの構造の壁が筋肉でできていると、筋が収縮するとピンと張ったり、逆にゆるめたりという調節ができる。たとえば、おなかには骨がないが、腹筋の層に力を入れることで、おなかの壁(腹壁)を硬くし、おなかの内臓(腹腔内臓)を外側から押さえつけることができる。これは排便のときに重要。また、腸の壁では筋層が周期的に縮むことで、腸が蠕動運動をして、内容物を肛門の方向に順々に押しやることができる。
層全体としては筋線維がたくさん含まれていても、筋以外の成分もいろいろ含まれていると、筋層とはいわないことがある。例:血管の中膜のことを筋層とはあまり言わない。血管、特に動脈の中膜には平滑筋が多いが、弾性線維も多い。胆嚢や前立腺の壁には平滑筋が多いが、こちらも線維が多いので、筋層とはあまり言わない。
筋層を作っている筋組織の種類はその筋層によって違う。腹筋(腹壁筋)の層は、横紋筋の骨格筋でできているし、腸の壁(腸壁)を作っている筋層は、他の内臓にある筋と同じように、平滑筋(内臓筋)でできている(平滑筋層という)。